「れ、蓮!?」


蓮の涙を感触で感じた事はあったが、形そのものを見たのは初めてだ。


動揺を隠せない。


「やべ…ッ、ださッ」



蓮は慌てて伝う涙を手のひらで拭った。


蓮が、泣く…だなんて。


しかし、蓮の涙は止まるなんて事しなかった。


クリスマスとだけあって、いつもより賑やかなファミレス。


隠すようにして置かれてある花にあたしは感謝した。



「…見なかった事にしてな。」


蓮はそれだけ言うと、顔を伏せて肩を揺らし始めた。


……泣いてる。



だけどそれもすぐだった。


蓮は5分くらい経てば、顔を上げて充血した瞳を見せまいと手で隠す。



「……蓮…」


「俺、本当情けないね。馬鹿だね…」


蓮の言葉にあたしは激しく首を横に振った。



「蓮は強いよ。すごいよ…」


「俺なんて強くないよ。…ただ、過去から逃げていただけだ…。でも」


蓮は手をどけて、充血した瞳をあたしに凛々しく向けた。



「今はちゃんと前だけ見て歩こうと思う」