「俺、強いって思った。すげぇって思った」
あの時は、部長だったから…。
あたしが泣いたら、絶対に迷惑かけると思ったから。
「……気付いたら、お前しか見てなかった」
蓮は恥すら見せる事無く、真剣な瞳で言った。
「……その時はもうあたしの事好きだったの?」
「今考えるとそうかもしれない。だけど、あの時の俺に恋する感情なんて分からなかったから…」
そうか。
確か、言っていたよね。
女は利用するものだって。
蓮はそう考えていたんだ。
すごいよ。
蓮はあんな部活少女だった頃のあたしを知っていたんだ。
「…俺さ、彼女の瞳に映りたいって思った」
蓮は、どこか遠いところを見ていた。
「でもさ、それはいけないことだった。」
……それって。
あたしと会っちゃいけないって事だよね。
どうしてあたしに姿を見せちゃいけないの。
「俺が汚れていたからだよ。」
あたしが思っていた事を見透かしたように、蓮は静かに言った。