グー…
その香りに誘われ、お腹が悲鳴をあげた。
とりあえず店は賑やかだし、誰にも聞こえなかったはず。
だと思ったのに…。
「いいよ。奢るから。」
「いい。大丈夫。」
……グー
…じゃない。
「…鳴ってるだろ。俺、今日は結構金持ってっから」
…今日は、じゃなくて。
今日だからこそ、我慢させてよ。
「いい。申し訳ない」
心とは真逆に身体は蓮の誘惑に乗ってしまっている。
「……じゃぁ、俺も頼む」
「え、いいよ。もうお腹いっぱいなんでしょ?」
そこまで気遣ってもらうのも、何だか申し訳ない。
「…食べる」
蓮はそう言うと、店員を呼ぶ。
女性店員の頬が赤いのは、きっとチークのせい?
蓮はあたしの注文も聞かずにスラスラと店員に、料理名を告げていく。
やっぱり蓮はかっこいい。
ノロケ…じゃなくて、絶対人間生きていたら絶対そう思うに違いない。
注文が終えると、蓮はさっき運ばれた水を飲み始めた。