「はぁ?お前、さっきから何なんだよ。意味わかんねぇ」
頭を掻きながら、蓮は呆れ顔を浮かべた。
いつものように喧嘩しながら、階段を下りると何やらあたしの鼻腔をくすぐる匂い…。
…食べ物だ。
如月家の夕食かな。
リビングに着くと、蓮のお母さんがエプロン姿で央ちゃんの頭を撫でていた。
そしてテーブルには、鍋。
その周りには、色とりどりの食材。
その中には、あたしの大好きな肉の姿もあった。
食材と匂いから見て…、すき焼きかな?
「おかん、出かけるから」
蓮はそう言うと、玄関で靴に履き替えようとした。
だけど……
「えー!?ここで、食べないのー!?」
蓮のお母さんが、パタパタと足音を立ててこちらへ向かってくる。
「当たり前だろ。今日は外で食うっつったじゃん」
「えー、嫌だ嫌だ!今日は、パパも出張でいないし、雄ちゃんも彼女とデートだし…。残りは私と央だけよ?可哀相だと思わないの!?」
「…ゆ、雄ちゃん?」
誰?
蓮はため息をついて、あたしに耳打ちする。
「工藤の事だよ」
ああ、成程ね。
っていうか、お母さん相変わらず美人…。
性格は本当、蓮に似ていない…。