「あんな学校一のモテ男…、俺には無理無理」
「でもその男には、彼女がいるじゃん」
そう、その彼女といえば、このあたし。
「……んー」
一樹は何だか曖昧な返事をしながら、あたしを見た。
「じゃあ、独り身はもうこの辺でさよならするよ…」
一樹はあたしに手を振りながら、外へと繋がるドアを開けた。
優と千明はもういつの間にか、いなくなっていた。
帰るの…早!
「花坂も帰れ」
如月家にまだ残ろうとしたエリ子に向かって、先生が言った。
「嫌だぁ!今日は如月君と朝まで一晩中過ごすんですー!」
「やめてよー、気持ち悪い」
あたしとエリ子と先生のやり取りを聞いていた一樹は、現実を実感している。
エリ子のどこを好きになったのだろう。
……やっぱ、顔か。
コイツ顔は、ミスグランプリに輝くほど良いからな…。
性格は、かなりドス黒いけど。
きっと、蓮の彼女があたしじゃなかったらアンタ…殺される範囲に入ってるよ。
「花坂。お前、市川と帰ればいいじゃないか」
……市川?
あ、ああ。一樹ね。
聞きなれない苗字だったから、つい…。
「うーん…。じゃぁ、今日は市川君で我慢します…」