先生はなぜか納得したようで、再び一樹とエリ子に目を向けた。


「…あぶねー」

蓮は、あたしにしか聞こえないくらいの小声で呟いた。


「危機一髪だね」

「お前が言うな、馬鹿」


蓮があたしを睨んで、数学の教科書であたしを殴る。


バコンと、威勢の良い音が響きわたった。


「痛いなぁ!?大体、あんたがしてくるからでしょ!?」


「はぁ?結局俺のせいかよ」

蓮は深いため息をつくと、あたしから視線を逸らした。



「……欲求不満め」


あたしは蓮に捨て台詞を吐き、机に目を向けた。



「悪いけど、俺は性的欲求は感じない」


……意味が分からない。


「成程…。じゃぁ、あたしとはそういう事したくないのか」


「俺はお前の身体で性的な気持ちになることはまずない」


蓮は、あたしの中学の頃の教科書を見ながらそう言った。


……う。

わかってるもん。


幼稚な身体だってことぐらい。


それを直接言わないでよ。


あたしは唇を尖らした。