「数学は理解が大切。考えて、理解して、そしてもう一度。これを繰り返すことにより、身につくから。お前にでもできるだろ?」
あたしは、コクンとゆっくり頷いた。
「そして、成績が上がったらお前どう感じる?」
「面白くなるんじゃない?」
「そう言う事。」
蓮は、シャーペンの先をあたしに向けて頷いた。
「ようは、努力の積み重ねだ。努力しないでできるヤツなんてどこにもいねーよ。」
「わぁ、何か蓮の方が先生って感じがする。何か数学好きになったかも」
まだ好きとは言えないかもしれないけど、蓮のおかげで本気になりそう。
「それは、どーも」
蓮が大袈裟に手を頭の後ろに回して、軽く頭を下げた。
「じゃぁ、この問題解いてみろよ。」
と蓮がさした先には、あたしの嫌いな証明。
仮定とか、結論とか意味のわからないものだ。
「分からないのは、教えてね?」
「あ、うん」
あたしは辺りを見回した。
優は千明と、イチャイチャの個人授業。
そしてエリ子と一樹は、あの短気の先生に教えてもらっている。
「蓮、疲れたから、チューしてー」
あたしは蓮に唇を突き出した。
……ちょっと、悪戯。
本気でやろうなんて、思ってはない。