……え、即答かよ。
「しかもアイツの事先生なんて言わなくていいよ。あんなの先生っていう欠片すらない」
蓮は頬杖えを突きながら、あたしの教科書を見る。
「…できないよ、呼び捨てなんて」
「あ、そ……って、何だこれ。この数学の教科書、何か幼いなーって思ったら中学のじゃね?」
蓮はページをペラペラ捲りながら、確かめる。
「うん、あたし、中学の基礎が分からないの。特に算数は」
蓮はあたしの言った言葉に、ハァとため息をついた。
……な、何よ。
「…いっとくけど、算数と数学は全く違うからな?」
「えっ?名前が変わるだけで、後は一緒でしょ?」
蓮はまたハァとため息をついた。
「あのな…?算数は計算の正確性などの理解が求められ、数学は論理の正確性の理解が求められるんだよ」
「はぁ?」
全く意味が分からない。
「簡単に言えば、算数は答えを求めて終わるだろ?だけど数学は違う。数学はその答えが"なぜそうなるのか?"と考えるものなんだよ。」
「うーん……」
「答えは必ず、1つだろ?」
「うん」
「でもその解き方は、さまざまで1000を超えたりする」
「うん」
「つまり、お前は算数と数学の勉強の仕方を一緒にしてるからダメなんだ」
蓮が左手で、シャーペンを回しながらあたしを見る。