「……あれ?」
目の前の景色は、いつのまにか教室になっていた。
「お前…先生に向かって…、何だ、その口は!!しかも"あれ?"じゃねえだろ!!」
……へ?
あたしは、自分の唇を確かめるようになぞる。
口は、まるでキスをするように、尖がっていた。
「!!!」
これで、やっと気づいた。
……夢、だったのか
あたしは、口を直して、先生に笑顔を向ける。
……先生は、顔を真っ赤にする。
そしてそのまま顔を隠すようにして、黒板の元へと戻っていく。
「はあ、雪…。あんた、また妄想してたの?」
前の席にいるあたしの友達の千明が、呆れたように睨む。
「え……」
妄想……。
妄想が、現実になってほしい。
「どーせ、蓮君にキスされる夢でも見てたんでしょ?」
千明は、意味ありげに窓の外を見つめる。
あたしは千明の言葉に思わず、立ち上がる。
それはもう顔を真っ赤にさせて。