あたしもいっその事、蓮を呼ぼうか。


ポケットの中に手を突っ込んで、携帯をいじくる。


いやいや、でもアイツはあたしとは過ごしたくないみたいだし…。


はぁ、いやいや、でもあたし等は付き合ってんだし…。


「本当、蓮は分からない」


……そう、これが心の奥底に隠れている本音。



分かっているようで、彼をまだ知らない。


ときどき、あたしの事…"好き"かさえも分からなくなる。


「じゃぁ、蓮はあたしが奪います」

突然の声に肩を揺らし、後ろを振り向いた。


すると、笑いながらあたしの頬を人差し指で突きながら遊んでいる花坂さんの姿が見えた。


「……なッ、何よ。」


ていうか、何でいるのよ。

ていうか、何で呼び捨てなの。

ていうか、遊ばないでよ。


彼女に言いたい事がありすぎて、何から喋っていいのか分からない。


「あたし、結構アホなんですよ。この前なんか、学年ワースト3に入ったんですから」


花坂さんは、フッと余裕の見える笑みを浮かべると自慢げに言った。


……自慢されても。


「あ、でも体力は、南さん並にあると思いますよ」

彼女は最近、あたしを南さんと呼ぶ。


いつもみんなには、雪、雪と連発されているのでなかなか慣れない。


親でさえ、あたしを雪って呼ぶ。


あんたも雪のくせに。

と突っ込みたくなる。