「………はは」


正直、笑う以外に選択がなかった。


もう一度蓮の方向を見ると、蓮は失神しているようでベンチで横になっていた。


一方の深波は唇を拭きながらこちらへ向かってくる。



「あー、みいちゃん。さっきは痛かった?殴ってごめんね?」


相変わらずふわふわの掴みようのない声。


男とキスしたというのに、かなり落ち着いている。


「…み、深波……?」


「あーあ。ヨリ戻しちゃったんだ。」

深波ははぁ…、とため息を漏らす。


………何だ?


「でもみいちゃん…。ライバルっていう関係には変わりはないからね?」


深波は意味ありげな言葉を余裕を持った笑みで放つ。


……え、何。

ライバル?

あたしと深波がぁ?


「はは…ッ。深波、冗談キツイよ」


「これがどうやら本気らしいぞ」


隣にいた優が腕を組みながら、感心したように頷く。


「雪、100%負けるねぇ」


突然、甲高い声があたしの耳に届いた。


声が聞こえた方向を見ると笑顔で手を振っている千明の姿があった。


「……ち、千明!?」