* *


「お兄さーん、一人ですかぁ?」


あたしは缶コーヒーを両手に、目の前にいる蓮の顔を覗きこんだ。


蓮はあたしの声に敏感に反応し、顔を上げる。



「………、え?」


突然の出来事に蓮は間抜けな声を出した。


「はい…ッ」


そんな蓮にあたしは、2つあるうちのコーヒーを1つ蓮に渡した。


「蓮…、コーヒーでいいよね?」


あたしは蓮に向かって微笑んだ。


蓮はあたしを見ては、目を大きく見開いていた。


ただ…、固まるだけ。


突然のあたしの登場に驚きを隠せないのか。



「……俺、頭おかしなったわ。帰る」


蓮はそう言って立ち上がり、どっかへ行こうとした。


「ちょ、ちょー…ッ!意味分からんし…」


あたしは立ち去る彼の腕を慌てて掴む。


蓮は、ゆっくりと振り向いた。


「……雪…?」


消え入りそうな声で蓮はあたしの名前を呼んだ。


「…雪だよ」


「マジ…、で?」