一樹は顔を真っ赤にさせる。


あたしはそんな彼に背中を見せ、校舎に戻る。


彼がいたから…。


あたしは、今…笑顔になれるのだと思う。


だから、次は、蓮に。


蓮に…。


………。


何気なく見た、校門。

そこにはどこか見覚えのある、姿。


……あの時の、女の人。


深波と蓮が呼んだ"葵"という女の人…。


「……あ…」


そうか。

蓮には、あの女の人がいたんだ。


……葵さんがいるから…。


あたしの出番は、もうないのかもしれない。



そう思うと、自然に涙が零れ落ちる。



「あ…っ、南さん…!!」


突然、葵さんと目が合う。