そんな彼を見ながら、あたしは舌打ちをした。
倒れればよかったのに。
まあ、いいや。
「ところで、一樹の好きな人って誰?」
「絶対、お前には言わない!!」
あたしの唇に人差し指を当てて、一樹はペロッと舌を出した。
「……。」
何か、バカにされた…ようでムカつく。
あたしは目を細くして、一樹を見る。
でも…。
「ありがとね。一樹が怒ってくれたおかげで、自分の気持ちに素直になろうって思ったよ」
「うん、それが一番だよ。だから俺のおかげなら、何か頂戴」
………あたしはまた一樹を睨む。
何故…人が褒めたら、そうなるのだろうか。
………あ。
あたしは、鼻で笑った。
そして、一樹の耳元でそっと囁く。
「一樹の見せる笑みは最高の武器だよ。その武器を好きな女に見せなよ。絶対、おちるからさ?」
あたしは一樹にそれだけ言うと、一樹の胸をポンッと叩いた。
「……な…ッ!?」