「お互いの気持ちを逆に取って、自分の気持ちは胸の奥底に隠してさ?」


一樹の言葉のひとつひとつが冷たい。

けれど、そんな言葉とは裏腹にあたしの頭を優しく撫でる。


「ごめんね?不安にさせた?俺…、雪村の事…好きじゃないんだ?」


………。

は?

あたしの頭の中に、?マークがたくさん浮かぶ。

「全部、蓮の為。雪村の事好きなくせに、過去を理由に別れを選択するんだもん。ちょっと嫉妬させたかった」


「はあ…!?」


「俺と蓮は友達だもん。蓮のあんな顔…もう2度と見たくないし。あんたと同じ気持ちで蓮には笑顔でいてほしかったからね」



さらに、言葉の意味がわからない。


「でも良かった。雪村も、蓮の事が好きって分かったから…」


一樹はそう言うと、普段、滅多に見せない笑顔を見せた。


そして一樹は、また立ち上がる。


「あんた等は、優しすぎんだよ。もう少しわがままになれよ、な?」


一樹の言葉が、胸に暖かく広がっていく。


「でも…」

「でもじゃねーよ。恋愛っつーもんはな、少しわがままになった方が丁度いいんだよ」


一樹はそう言うと、視線を空へと向けた。


あたしも空を見上げる。