南の顔に触れる一樹の手に嫉妬を抱く。


その光景に耐え切れず、目を伏せた。


「行こ。」


一樹は南の肩に手をまわして、そのまま教室をあとにした。



「……ッ」


言葉が出ない。


行くな。


この一言がいえたら、どんなに良いことだろう。


でも今の俺には…。


違う…。

俺には、一生言えない言葉だ。



言葉が出ない代わりに、涙が姿を現す。


格好、悪い。


「みいちゃんは、アイツとが一番似合ってるよ」


仰向けになりながら、深波は気の抜けた笑いを飛ばした。


そうか。

コイツも、雪が好きだったのか。


過去の過ちから抜け出せない、俺等。


それでも。

それでも、もう一度、やり直したいって思うのは、わがままだろうか。

……欲張りだろうか。


俺はもうアイツの後ろ姿を見送ることしかできないのだろうか。