深波は腹を抱え、咳を激しくこむ。


でもすぐに立ち上がり、口を手の甲で塞いだ。


微かに見える口元は、意味ありげに笑っていた。


何なの…この人。

「深波は、何を望んでいるの?何を狙いとして、こんな酷い事してるの…ッ!?」

「望み……?」


深波はあたしを見下ろして、バカにしたような目で笑う。

そして一言。


「報われない恋の復讐?」

深波はそう言って、静かに笑う。


その言葉に誰もが、言葉を失った。


報…われない…?


一体、それは何を指しているの…?


「だからあんた等見てると本当、ムカつく。自分が犯した罪を忘れて、人、好きになってんだから」


「……忘れてねーよ…。」


……蓮の声が、震えながらもはっきりと聞こえた。


「お前だって好きな奴…いんだろ?だったら…、わかるだろ?好きって気持ちが、大きい存在だって事ぐらい…。」


「わかるよ。だから俺は好きって感情ひとつで、ここまで来た。アメリカから日本へ来たのも…わざわざこの学校に入ったのも…」


深波は、ひとつ息を深く吐いた。



「全部、そいつに会いたかったからだ」