嫌い
この言葉がどれだけ人を傷つけるのか、南は分かっていた。
だからこそ…この偽りの言葉を選んだのだ。
真実がどこにもない、ただの偽った言葉…。
蓮を傷つけて、傷つけて…
そして、蓮が南の事を嫌いになってくれるように…。
そういう意味が込められた言葉だった。
「もう、うんざり。蓮の過去も全て受け止めるって言ったけど、あたしにはそれは無理。」
……違う。
そんな事が言いたい訳じゃない。
でも言わなきゃ、蓮は自分の事…嫌いになってくれない。
「そっかあ…」
蓮は天井の一点をただ見つめるだけだった。
本当に自分が憎い。
悪いのは南じゃない。
悪いのは全て自分。
でも傷ついているのは、南の方だった。
忘れていた…。
自分は人を愛してはいけない人間側だということを…。
愛せば愛すほど、苦しめていたのだ……。