「……俺は、」
沈黙を破ったのは、蓮だった。
「俺は…、お前の親父さんに、感謝するね」
蓮はそう言いながら、頷いた。
あたしは、蓮の言葉に絶句した。
……感謝?
何、言ってるの?
「……蓮、冗談で言ってるんじゃないよ?」
「俺だって、冗談で言ってねえよ」
……冗談で言っているようにしか思えない。
特に、蓮が言うと。
「感謝って…、ヤリ逃げだよ!?ただの自分勝手な酷い男に何で感謝する必要があるの!?」
あたしは繋いでいた手を勢いはなして、立ち上がる。
感謝すること、あの人は何もしていない…。
「そうかな?」
蓮は首を傾げる。