「蓮…入学式の時、俺は童貞だみたいな事言ってたよね?」


高校の入学式のあの日…。


あたしの記憶は蘇る。


『ねえ、童貞ってどう思う?』


『最近の男共はおかしいよね。セックスしなきゃあ、男の恥とかワケの分からないことを言ってさあ。ヤッたらヤッたでさあ、自慢してくるしさあ。正直うざいと思わないか?』


さまざまな記憶が薄れていく中、あの日の出来事だけは一切消えていない。


今でも、鮮明に覚えている。



「あの…、ごめん」


蓮は、謝る。


それはきっと、

俺は童貞じゃない。


と、遠回しに言っているのだろう。


ていうか…、謝られても逆に困るっていうか…。


人は、経験それぞれなんだし…。


「いや…っ、別に大丈夫…」


そういえば…


蓮は、あたしとしたくないのだろうか…。


付き合って、1年3ヶ月。


普通なら、あり得ないほど、何も起きていない。