「あ…っ、蓮は俺の家に泊めておくよ。雪ちゃんは気にしないで」


あたしと蓮の光景に優は耐え切れなかったのかそう言う。


「ごめんなさい…ッ。絶対返すから」

「だからいいっつってんだろ」


お金には敏感にケチ反応を示す蓮。

だからこんなに怒っているのだろう。



「じゃあ、俺等はこっちだから…」


優が駅を指して、あたしに言った。


ここ、あたしの地元から蓮と優の家までは程遠い。


あたしの家に送ってもらう時間なんてきっとないだろう。



「うん…わかった。じゃあね…蓮、優」


気まずい空気の中、あたしは2人に手を振った。

優はもちろん返してくれたが、蓮は完全に無視をした。



いくら冷たい男だってわかっていても、無視されることは今だに慣れない。



心の中に黒い影が広がっていく…。