人々が仕事から帰る途中──疲れた体を引きずっている人々の耳に大音量の曲が入った。

 悲しいテンポで、どこか染み入るような素敵な音色だった。

 それに魅入った人々が曲の音源を探す。



 それは、路上ライブだった。

 駅近くの道の隅に、悲しさと優しさに満ちた音楽は流れていた。

 スピーカーから流れる音楽に乗って、ライブ中の少女が、歌い出す。



 温かさに満ちた、どこか悲しげなスローな曲調と心に突き刺さる歌詞。

 人々の注目を惹きつけて離さない。


 夕方から夜にかけて。


 少女は、歌を届ける──。