「急にお呼び立てして申し訳ありません。申し遅れました。宮本夏紀と申します。」

丁寧なゆったりとした物腰。

私にはまだない、母親の持つ特有の温かい、安心感のある雰囲気をまとっていた。

一瞬、そのたおやかな笑みをたたえた彼女に見とれて、我を忘れてしまう。

ベージュのシンプルなワンピースは、彼女の腕と首の白さを際立てていた。

誰が見てもとても美しい女性。

アキが惹かれるのもわかるような気がした。

「初めまして・・・じゃないですね。ハルです。公園で一度お会いしたことがあるんですけど、覚えてらっしゃいますか?」

「ええ、初めましてじゃないですよね。私もしっかり記憶しております。」

あ、覚えててくれてたんだ。

「ゆうき君、元気ですか?」

「はい。」

子どもの話を振ると、夏紀さんはうつむいて言葉をにごした。

「少し落ち着ける場所にでも行きましょうか。」

夏紀さんの提案で、ホテルの7階にあるおしゃれなカフェに入った。