「でも、アキって、男から見ても放っておけない雰囲気をまとってんだよね。で、放っておけなくてこちらから手を差し伸べると、するっと交されて、こっちは何とも言えないような気持ちになるんだ。男同士ならそれ以上求めないし、あきらめつくんだけど、異性となれば話は別。結局、元カノ、すっかり精神的に参っちまって、その後大変だったって風の便りで聞いたよ。まぁ、当時はまだ多感な年頃だったってこともあるけど。」

「そうなんだ。」

なるべく平然とした表情で、雑誌をめくった。

「アキも悪気はないんだろうけど。母親と幼い頃に別れてるから、それも影響してるのかなぁ。いつまでたってもつかみ所がないっていうか、相手を不安な気持ちにさせるんだ。結局、そうやって振り回されて精神的に不安定になった女性がアキの周りには何人もいるって、叔母さんが嘆いてた。俺の元カノは、それほどでもなかったみたいだけど、ある彼女はかなり重症で入院までしたとか言ってたな。」

あ、ひょっとしてよく電話かかってくる彼女のことかな?

「だから、俺、ハルはアキにはあまり近づいてほしくないんだ。アキ自体は俺も好きだけど、そういう過去知ってるから、不安なんだ。」

雑誌をめくる手はすっかり止まっていた。

そんなにも心を狂わせる人なの?アキって。

知れば知るほど、わからなくなる。

見た目と違って、ずっと深くて寂しい人。

そして、とても愛されたいと願っている人。

彼の愛を満たしてくれる人が現れたら、きっとアキもそんな風じゃなくなると思うのに。