「元カノ?」

そういえば、以前アキが直太の元カノがどうのこうのって言ってたっけ。

「そう、俺がまだ十代のころに付き合ってた彼女なんだけど。一度アキと三人でお茶する機会があってさ。アキはいつもの調子で彼女に接してたんだけど、彼女がその日を境に俺に連絡をくれなくなったんだよ。」

「どうして?」

「ん、まぁ、格好悪い話になるけど、アキにとられちゃったっていうか。」

「とられちゃった?」

「アキって、気のあるそぶりでしゃべったかと思えば、急に突き放したようなこと言ったりするだろ?俺には、そういうとこ全然ないし、元カノはそういう俺とは違う一面にノックアウトされたらしくて、帰り際に俺に内緒でアキの連絡先聞いてたらしいんだ。」

「ふうん。」

あえて、あまり興味のないそぶりでソファーに座って、雑誌をめくった。

「元カノは、速攻アキにモーションかけまくって、さすがに参ったアキは何回かデートはしたものの、やっぱり気が乗らなくて自然消滅に持っていったみたいなんだけど。」

直太は、ネクタイをはずした。

「俺も当時は若かったし、アキに彼女を奪われたって猛烈に腹が立って何年か口も聞かなかったんだけど、後々話したら、アキは最初から全くその気がなかったらしく、いつものように振る舞ってただけだって。元カノが勝手に好きになっちゃっただけだったみたい。それはそれで、俺の立場は?!って感じだけどさ。」

そう言うと、自嘲気味に笑った。