「ハル。」

「は、はい?」

「悪いけど、もう帰る。」

え??どうしてそうなるわけ?!

アキは、そう言うと、テーブルに出したままの封筒を自分のリュックに素早く仕舞った。

「イラストはオッケーっていうことで。今日明日中に荻原さんに手配しとくよ。じゃ。」

じゃっ、って。

さっきまでの空気の張りつめた雰囲気はどこへ行ったのよ。

夜ご飯だって、アキから誘ってたくせに。

こういうのを自分勝手、自己中心っていうのよ!

アキと話してるとジェットコースターに乗ってるみたい。

疲れるよー、全く。

アキは、またいつもみたいに軽く笑って玄関から出ていった。

私の鼓動は、まだアキに抱き締められたその時のままだというのに。

見た目よりもがっしりとした温かいアキの胸板が私の体の記憶に残ってしまった。

どうしてくれるのよ!

アキがさっきまで座っていた椅子を見つめながら、冷めてしまったコーヒーを一口すすった。

大きなため息をつきながら。