「アキ?なんでお前がいるの。」

その口調は、従弟に対してとは思えないくらい冷たかった。

完全に怒ってる。

「よっ。直太兄、久しぶり。驚いた?」

アキはあくまでも自然に振る舞っているようだった。

「驚くも何も。どういうことだよ。」

直太は冷静に話そうとしているんだろうけど、顔はみるみる紅潮していく。

心なしか唇が青ざめている。

こんな直太を見るのは初めてだった。

何だか怖い。

「まずは勝手にお邪魔しちゃったことごめんよ。理由は・・・ハル、ハルさん、言っちゃってもいいですか?」

直太のいる手前、丁寧な口調に変った。

「え・・・。」

アキは何を言おうとしてるの?でも、信じるしかない。軽くうなずいた。

「実はさ、直太兄を驚かそうと思って内緒で進めてる仕事があるんだ。」

「仕事?」

「うん。本当は出るまで内緒にしておくつもりだったんだけど。今度出る童話雑誌にハルさんの作品が選ばれてさ。しかも、偶然にもハルさんの童話のイラスト、俺が描くことが決まって。」

「そうなのか?ハル?」

直太は、まだ怖い顔のまま私の方を強い視線で見た。

私は慌ててうなずいた。

「こないだ郵便物の話したでしょ?あの話の延長線上よ。」

「郵便物?あ、ハルがアキに怒ってたやつか?」

「うん、そう。」