「・・・いいけど。今、渚公園に来てるからすぐに来られてもいないと思うし・・・。」

「え?渚公園?」

珍しくアキの声が慌てた。

「何?」

「いや、俺の彼女も今渚公園に来てるってさっき電話で話したからさ。」

え??思わずキョロキョロと辺りを見渡す。

公園には、老人や子ども達、あと、さっきの親子くらいだったよな・・・。

もしかして・・・?

「彼女って、みやもとさんっていう?」

アキが電話の向こうで小さく「うっ」と言うのが聞こえた。

「え、何で?」

少し冷静なアキの声がする。

「まさか図星?」

「名字はまさしくそれだけど。人違いってこともあるからな。」

「ゆうき君っていう男の子と一緒だったけど、どう?」

少し間があった。

「ハルって相変わらずだね。」

刑事っぽいってこと?

「さっき、少しお話したから。あなたの彼女と、そのお子さんと・・・。」

「ふぅん。」

でも、あんなに素敵なお母さんがアキと婚外恋愛?

本当に信じられない。

「ま、いいや。とりあえず、30分後くらいにハルんち行くから。」

アキは気を取り直してそう言うと、そのまま私の返事も待たずに電話を切った。

ふぅ。相変わらずなのはアキも一緒だわ。

そして、しばらく私は空虚な気持ちでぼんやりと公園を眺めた。

いつの間にかさっきの親子はいなくなっていた。


アキの彼女って・・・。

とても、そんな不実なことをするような人には見えなかった。

それに、あんなかわいい坊やがいるのに。

胸の奥の方が重たくうずく。

見てはいけない真実を目の当たりにしたような感じ。

本とチョコクロワッサンを手提げバッグにしまうと、急いで家へ向った。