うつろな目のまま、アキはポツリポツリと話し始めた。

「元カノってさ、どうも付き合ってる頃から俺と結婚する気満々だったんだよね。俺は誰とも結婚する気はないから、それを知ってかなり悩んじまったみたいで、いわゆる心の病になっちゃってさ。当時かなり重症で入院してんだ。」

「そうだったんだ。だから急に呼び出されたりしてたの?」

「そ。俺もさ、無視すりゃいいんだけど、入院までさせちゃって、やっぱり責任感じるででしょ?だから、俺のできる範囲で元カノの力になってやりたいなって思って。」

意外なアキの言葉だった。

そんな誠実な部分があるなんて。

「でも、元カノは、アキに新しい彼女がいることは知らないんでしょ?」

「そんな相手に本当のこと言えるわけないじゃん。まだ俺と付き合ってると思ってるよ。それに、その話はドクターストップかかってるし。」

「そうなんだ。でも、いつかはちゃんと言わないといけないんでしょ?元カノ、大丈夫なのかな?」

「元カノも随分状態よくなってきてるし、退院も近いんだ。またドクターや家族と相談して、その時が来たら打ち明けようかなって思ってる。」

大変そうだな・・・。

でもこれも自分の蒔いた種だもんね。しょうがないのかもしれない。

アキは大きく伸びをした。

「まぁ、なるようになるでしょ!」

またアキの悪い癖。

途中まではいいこと言うのに、最後でそんな風になっちゃうから軽く見られちゃうんだって。

見直しては、がっくりの繰り返しだわ。

「なるようになるって・・・。そういう訳にはいかないんじゃない?」

アキは、ちょっと憤慨している私を見て、軽く笑った。