「そこそこ。ちょっと雰囲気いい喫茶だと思わない?」

アキが指さす方には、ずいぶんと古くからありそうなレトロな雰囲気の喫茶店があった。

うん。

このセンスは私も共感。

重たそうな古びた木の扉。その横に思いがけず大きな窓。

窓の周りの壁を埋め尽くすようにアイビーがはっていた。

扉の上にはしゃれた年代物のランプ。

こんなアンティーク大好き。

入り口の扉を開けると年季の入ったベルの音が「カランカラン」と鳴った。

カウンターの向こうに、白髭を生やしたマスターらしきおじさんがコーヒーカップをふきながら、こちらをチラッと見た。

「いらっしゃい」と敢えて言わないのが、なんだかここのお店の雰囲気にあってる。

「窓際の席、あいてる。」

アキは指さした。

アイビーが覆ってたあの大きな窓際の席が、こちらへどうぞと言わんばかりに空いていた。

薄暗い店内に、大きな窓から差し込む光は、その席を一層優雅な雰囲気に見せていた。

アキは、素敵な店内に見とれている私の手を掴み、

「早く座るぞ。」

と笑いながら席まで引っ張っていった。

こんなおしゃれな場所、会社の近くにあっただなんて知らなかった。