「じゃ、これで決まりね。アキはハルちゃんと相談しながらイラスト描いて。できたらすぐ連絡すること。」

「あぁい。」

右手を挙げてちょっと間延びした返事をしたアキを、荻原さんが「こら」ってゲンコツで軽く叩く真似をして笑った。

「アキっていつもこんな調子だけど、仕事は早いし、締め切りもきっちり守ってくれるのよ。」

「そうそう、俺って根は真面目だからね-。ハルさん、頼りにしてよね。」

荻原さんとアキの間には信頼関係があるようだった。

仕事に関しては頼れるのかもしれない。

普段の言動からは考えられないけどね。

荻原さんとアキがじゃれあってる姿を少し安心した気持ちで眺めた。

アキって、意外といい奴なのかな・・・。


荻原さんとアキが立ち上がったので、私も慌てて立ち上がる。

背の高いアキは、私をちらっと見下ろして、すごく自然に言った。

「じゃ、これからお茶でもしにいくか。」

「え?」

「こないだの送料も返さないといけないし、携帯番号も聞かなきゃなんないし。色々とあるしさ。」

「あ、はい。」

思わずその強引な提案に、即答させられていた。

女性を誘うのも慣れてるんだろうなぁ。

いつも、隙を与えず自分のペースに自然に巻き込んでいくというか。

冷静に考えたら、お茶なんかしなくても、送料返してもらえるし、携帯番号も渡せるのに。

そんなアキにいつも振り回れてる私も私なんだけど。

アキと私は荻原さんにあいさつをして、会社を後にした。