アキは、じっと私を見つめた。

「本当に任せてくれるの?」

「はい。アキさんが私に抱いてくれてる作品イメージ、すごく嬉しかったです。やっぱりわかってくれてるって感じで。よろしくお願いします。」

「すっげー嬉しい!荻原さん、ハルさん、本当にありがとうございます!俺も二人の期待に背かないように張り切って描かせてもらうよ。」

アキは、そう言うといきなり私の両手を掴んで頭を下げた。

温かくて大きな手は私の両手をすっぽり包んでいる。

やだ、やめてよ。こんなの大げさすぎるし、それにそれに・・・

私の鼓動は再び激しく打ち出した。

「その代り。」

アキは手を握ったまま視線だけ私に向けた。

「俺にハルさんの連絡先教えて。」

うっ。

やっぱり、ちゃらい心を入れ替えてくれたと思った私が馬鹿だった?

私が不快な顔をしたからか、すぐにアキは続けて言った。

「そんな変な意味じゃなくって、任されたなりに、やっぱり相談しながら描いていかないと、全部描いちゃった後で「これパス」ってされたらこっちも辛いしさ。途中経過を報告するっていう意味で連絡先教えてほしいんだ。」

な、なぁんだ。

仕事の必要性があっての連絡先だったのね。

私も早とちり。

相当、アキの第一印象が悪いから、すぐに軽いって決めつけちゃう。

「わかりました。後で携帯番号教えます。」

ようやく納得して答えた。

「はいはい、今日はもう解散ね。二人は関係性もばっちりみたいだし、私も安心したわ。」
 
荻原さんは私たちを優しく見つめて言った。