荻原さんが、私の原稿のあらすじを4場面構成で簡単に説明した。

「ページ数は10ページ。2ページ見開きは表紙ね。この4場面のイラストを描いてもらえたらなって思う。ハルちゃん、何かアキに言っておくことはない?」

いつもなら、どの場面をどういう雰囲気のイラストにしてほしいとか、色々要望出すんだけど、今回はただアキがどんな風にこの作品を受けとめて描いてくるのか任せてみたい気がした。

「今回は特に要望はありません。アキさんの好きなようににお願いします。」

そういうとぺこりと頭を下げた。

「え?いいの?」

荻原さんとアキは、驚いた顔をして私の方を向いた。

そうだよね。

こんな新人イラストレーターさんにお任せだなんて、きっと前代未聞?!

なぜか、アキ自身はともかくアキの描く作品には信頼できる何かがあった。

「アキさんは、私の今までの作品も読んでくださってるみたいだし。先日、荻原さんにアキさんのイラスト見せて頂いて、どのイラストも私の思い描いている作品を感じ取って下さってる印象があったので。いいですか?お任せしちゃって。」

「俺の絵見てそんな風に思ってくれたんだ。すげー、感激だな。」

アキは、少年のように嬉しそうな顔をした。

「アキは、ハルちゃんの作品読んで、どんな印象を受けたの?」

荻原さんはアキに尋ねた。

「文体はすごく柔らかくて優しいんだけど、なんかこう強い光を秘めてるっていうか。強いんだよね。文章からその強い思いがあふれてる感じ。だから、普通に柔らかい色やタッチで描くより、意志を持った部分をところどころに散りばめないといけないって思った。」

アキは、まるで自分の作品かのように、淀みなく答えた。

その言葉は私が発しても全くおかしくない、私の思いそのものでもあった。

「アキは仕事の話させたら、急に凛々しく格好良く見えるわ。普段はそんなでもないのに。」

荻原さんは、うなずきながら机上の書類をまとめた。

「普段も格好いいって思ってるくせに。」

アキは、笑いながら荻原さんの腕をつついた。

荻原さんはそんなアキを笑顔で交わしながら、私の方を向いた。

「じゃ、本当にアキにお任せしちゃっていい?ハルちゃん。」

私は大きくうなずいた。