真剣に読みふけってるアキに、荻原さんがそっと声をかける。

「アキ、今読んでしまわなくてもいいわよ。帰ってからゆっくり読んで。これから、簡単に今回のストーリーを説明するわ。その後、ハルちゃんからイラストに関する要望をあなたに伝えてもらうから。」

アキは、ふっと我に返ったような様子で、視線を荻原さんに向けた。

そして、ゆっくり私を見た。

「今回のも、俺好きかも。」

あまりに真面目な顔で言うから、意表を突かれてどう反応していいかわからない。

何か笑って答えなきゃ。

でもダメだ。頭の中の機能がショートしてる。

アキのこのまっすぐな瞳は、どうも私の精神バランスを崩すようだ。

落ち着こうとすればするほど、胸の鼓動が激しくなる。

顔も熱い。あー、どうしよう？

言葉を返そうとしながら、まごついてる私を見て何かを察したのか、アキは少し微笑むと、私から目線をそらし荻原さんの方を向いた。

視線から逃れただけで、次第に自分がクールダウンしていくのがわかった。

また「赤くなってるー」なんてちゃかされたらどうしようかと思ったけど。

助かったぁ・・・。