「へへっ。また会っちゃったね。俺たち意外と運命の赤い糸でつながってるのかもよ。」

向かいの席に座っていたアキが、またちゃらけたことを言ってる。

そんなアキを一瞥して、軽くため息をついた。

返す言葉も見つからない。

今日は、イラストレーターであるアキとの顔合わせと打ち合わせの日だった。

「はいはい、お久しぶりアキ。今回のハルちゃんのイラストよろしく頼むわね。」

荻原さんがお盆の上にコーヒーを3つのせてやってきた。

「荻原さん、まかしといて。俺、春咲さんの作品気に入っちゃったんだよね。どんどんイメージわいてくるよ。」

「あら、春咲さんなんて他人行儀な呼び方してるけど、ハルちゃんの旦那様の親類なんだって聞いたわよ。」

アキは、私に視線を向けた。

「あ、しゃべっちゃった?」

黙ったままうなずく。

「しゃべっちゃった?」なんて、まるでしゃべっちゃいけなかったみたいな言い方。

気分悪いわ。