『月と虹』  さく・春咲 ☆ え・秋


「寒いよう。」

みいちゃんは、布団の中で目が覚めた。

目をこすりながらあたりを見渡すと、

真っ暗な部屋の中に、ちろちろと明るい光が窓から差し込んでいた。

まるで「こっちへおいで」と言ってるみたいに、光はゆらゆらと揺れていた。

みいちゃんはベッドから足を床に降ろした。

床の上は氷のように冷たくて、びっくりしたみいちゃんはすぐに足をベッドに上げた。

そして、布団の上に置いてあった靴下を履いて、ゆっくりと立ち上がった。

冷たい空気がみいちゃんの体を包む。

思わず両手で自分の体を抱き締めた。

吐く息はほんのり白い。

みいちゃんは、ドキドキしながら光の差す窓辺へ歩いていった。


窓を静かに開いて、光の方を見上げる。

月。

藍色の澄んだ空に、大きなまるい月が光り輝いていた。

太陽にも負けないくらいの美しい光が、みいちゃんをすっぽりと包み込んだ。

暖かい。

その光はとても柔らかく、暖かい光だった。

寒い冬なのに、春のようなまぶしい光。

光に包まれていると、まるでお母さんが抱き締めてくれてるみたいに気持ちがよかった。

みいちゃんはうれしくなって、

「お母さん!」

と両手を月に向かって広げて叫んだ。

まぶしい月の中に、誰かがいるみたいに見えた。

「だあれ?」

みいちゃんは少し怖かったけど、勇気を振り絞って尋ねた。

月の中の人はだんだんと大きくなって、はっきりと見えてきた。

みいちゃんはそれが誰だかわかって、にっこり笑った。

「お母さんね!」

月の中のお母さんも優しく笑ってる。

窓にしっかり捕まって、今にも手が届きそうなお母さんに手を伸ばした。

「お母さん、ずっと探していたのよ。こんなところにいたの?」

みいちゃんは嬉しくって、お母さんをしっかり見つめた。

お母さんは、笑っていたけど、悲しそうな目をしていた。

「お母さん、寂しかった?みいは、とっても寂しかったの。」

みいちゃんも、お母さんの顔を見て悲しくなってきた。

でも、お母さんはじっとこちらを見ているだけで、みいちゃんのところには来てくれない。

それに、何もお話してくれなかった。

みいちゃんは悲しくて悲しくて、涙があふれてきた。