会議室に入ると、荻原さんの上司の山根編集部長が一番奥の席に座っていた。

この部長、「若いけどなかなかやり手なの」なんだって、以前荻原さんがこっそり教えてくれた。

「久しぶりだね。ハルちゃん。」

山根編集部長は、ゆっくり立ち上がって右手を挙げた。

「ご無沙汰しています。今回はまた雑誌に私の童話を掲載して下さることになって、本当に感謝しています。」

私は山根編集部長にぺこっと頭を下げた。

「読ませてもらったけど、ハルちゃんらしい柔らかい優しい文章に癒されたよ。そんな素敵な話に合うイラストを選ぶのがこれまた大変でねぇ。荻原くんとも意見がぶつかっちゃって。」

荻原さんは首をすくめて、舌をペロッと出した。

「こないだ話したように、今どちらにするか迷ってるのがこの2人。」

テーブルの真ん中に二つのイラストが並べられていた。

私は胸に手を当てて、ゆっくりと視線を下ろした。