そして、静かに続けた。

「理由は聞いてもいい?」

私の妊娠・・・。

アキに話すべきだろうか。

話したら、本当に離れていってしまうような気がした。

「理由・・・?」

優しくお腹をなでた。

「話したくない?」

アキは少し笑って聞いた。

「うううん。話せるよ。」

「ひょっとして、俺が傷つくような内容かな。」

「どうだろ?」

「じゃ、聞かない。」

アキは、あっさりとそう言った。

聞かないんなら、あえて言わなくてもいいのかな。

ねぇ、お腹の赤ちゃん。

それくらいは許してくれる?

アキは、短いため息をついて言った。

「月曜会えないってことは、この電話が最後になるんだな。」

最後・・・。

最後?

連載の話はまだ聞いてないのかな。

思い切って聞いてみた。

「最後、かどうかはわからないわよ。荻原さんから連絡来た?」

少し間があって、

「ああ、つい今し方連絡もらったよ。」

と言った。

アキは、どう答えたの?

もちろん、引き受けてくれたのよね?

「アキは、引き受けたの?」

「いいや。断った。」

即答だった。

「ど、どうして・・・?」

思わず声が震える。

「その方がいいと思ったから。ハル?」

「うん?」

「これで最後にしような。」

「・・・。」

「きっと、これでよかったって思える日が来るよ。」

アキは穏やかだった。

とても。

「会えなくても、ハルが幸せだったらそれで十分。直太兄とだったら、それが叶うさ。」

幸せ・・・?

「この広ーい空のどこかで、いつもハルのこと思ってる。ハルもたまには、空を見て俺のこと思い出してよ。だから、これでさよならってことになるか・・・。」

さよなら?

「いや、いつか会う日まで・・・かな。」