愕然とした。

さっきまで飲茶ランチに胸をときめかせていたのに、瞬時に深い穴に突き落とされた気分。

気持ちの浮き沈みが激しすぎるよな。

これも、妊娠のせい?

「あ、ハルちゃん、そのことは知らなかった?」

「は、はい。」

「・・・ショック、だったかな?」

荻原さんは、上目遣いで少し私の気持ちを探るような聞き方をした。

まずい。

自分の気持ちは、他人には絶対ばれちゃいけない。

「そりゃ、一緒にお仕事した仲間ですもん。そんなに長いこと向こうに行っちゃうなんて、少しショックですよ。」

荻原さんは優しく微笑んだ。

「そうよね。アキとハルちゃん、いいコンビだったし。」

何か気づかれた?

勘のいい荻原さんだもの。

胸がドキドキする。

もっと平静を装いたいのに、明らかに目が泳いでる私。

心を落ち着かせるために、運ばれてきたジャスミンティーを一口飲んだ。

鼻からふわっとジャスミンの柔らかい香りが入ってきた。

荻原さんと会話しながらも、ぼんやりとアキの5年後を想像していた。

どんな風になって帰ってくるんだろう。

もっと素敵な絵を書けるアキになって、少ししわなんかも増えたりして・・・。

きれいなフィアンセを横に連れて歩いて・・・。


そうこうしているうちに、目の前においしそうな飲茶ランチが運ばれてきた。

湯気のたったほくほくの飲茶達。

瞬間、現実に引き戻される。

「うわー、おいしそう!」

思わず声が出た。

人間にはやっぱり食は大切なんだわ。