「あ、直太兄から聞いた?」

「うん、聞いたも何も。私がアキと会うことを伝えようとしたら、先に言われちゃったわよ。」

「そう。それならよかったじゃん。」

よかったじゃんって・・・。

そうなるようにしたのはアキなんじゃないの?

「ありがとうね。」

私はぽそりとつぶやいた。

「別に。ハルのためってわけじゃないよ。たまたま。話すことがあったからさ。」

そうだ。

アキはパリに行くって直太が言ってた。

「パリに行くって本当なの?」

しばらく間が開いて、

「うん。」

と小さなアキの声が聞こえた。

「どうして?」

「どうしてって、俺言わなかった?真剣に絵の勉強するってさ。」

「だけど、どうしてこんな急に、しかもパリだなんて。」

「ハル・・・のこともあったし、最近色々かけずり回って調べてたんだ。できるだけ遠い場所で絵の勉強できないかって。」

「遠い場所・・・?」

「だってさ、ハルの顔、いつでも見れちゃう場所だったら無理でしょ?」

「・・・。」

「そしたら、荻原さんの紹介で、あるイラストレーター紹介されてさ。」

「荻原さん?」