「あのね。まだわかんないんだけど。」

「何さ。」

「ひょっとしたらなんだけど、赤ちゃんが出来てるかもしれない。」

気づいたら、お腹の赤ちゃんは、その存在を半分否定されていた。

言いながら、自分の愚かさに気づく。

ひどい。

ひどすぎるよね。

もうちゃんとお腹に存在している赤ちゃん。

なのに、直太の前で喜んだ顔をすることができないからって、こんな風に告げてしまうなんて。

「え?そうなのか?もう産院には行ったのか?」

「ううん。まだ。今度行こうと思って。」

「今度って、そんな大事なことすぐにでも確認しろよ。」

明らかに興奮している直太。

そりゃそうだよね。

きっと誰だってそう。

私が変なんだ。

私が間違ってるんだ。

「アキさんと会った後、産院に行ってくるよ。」

「そんなのダメだよ。早めに行かなきゃ。妊娠初期って大事なんだぞ。」

「うんわかってる。月曜までは無理しないって。」

どうして、月曜に産院へ行くなんて言ってしまったのか、自分でもよくわからなかった。

「しょうがないな。でも、もし少しでもおかしいことがあったらすぐに行くんだぞ。それにしても、やったな!ハル!」

直太は嬉しそうに既に空になっているジョッキを口に運んでいた。

「あ、空になってる。お代りだー。あ、ハルは動かなくていいぞ。俺自分でやるからさ。」

うかれた足取りで、冷蔵庫に冷えたビールを取りにいった。