「あれ?ハルは、その話じゃなかったの?えらく驚いた顔してるけど。」

急に直太の眉間にしわがよった。

あ、ばれちゃう。

気を取り直して、笑う。

「ううん。全くその通り。いや、まさか直太が全部知ってるなんて思わなかったからびっくりしちゃって。」

「ごめんごめん。俺も、ちょっと意地悪な気持ちになって、ハルより先に言っちまったんだ。話の腰折っちゃったね。」

私は何も言わず首を横に振った。

「来週の月曜、せいぜいおいしいもんでもご馳走してもらってこいよ。今度いつ会えるかわかんないし、芸術家同士盛り上がってきたらいいよ。」

「うん。」

もうそれしか言えなかった。

私の中はアキへの思いではち切れそうだった。

パリへ行ってしまうの?

そして、私が告げる前に、わざわざ直太に言ってくれてたんだね。

きっと、私のために。

それだけで涙がこぼれそうだった。

「二つ目の話はなんだ?」

残っていたビールを飲み干した直太が私に向き直った。

二つ目の話・・・そうだ、お腹の赤ちゃん。

なんだか、こんな気持ちのままじゃ、嬉しそうな顔して言えないかもしれない。

どうしよう。

私の中で、大事なものが二つぶつかり合っていた。