少し痛んだお腹をなでる。

私の赤ちゃん。

本当にここにいるの?

まだまだ小さくて、実感がない。

でも、存在だけはものすごく大きくて。

直太に・・・言わなくちゃ。

妊娠したこと。

それから、アキと会うこと・・・。

そのことを考えただけで、体が数倍重たく感じる。

ベンチに腰掛けたまま、しばらく動けずにいた。


夕方、直太からの電話。

なんとなく気持ちが落ち着かないまま出る。

「もしもし、直太?」

「おう。体の調子はどう?」

「うん。大丈夫。」

妊娠したこと、今言うべき?

結局、タイミングを逃す。

「今晩、飲みに行くから遅くなるんだけどいいかな。」

「いいよ。構わずに行ってきて。」

少しホッとした。

今日は、言わなくていい。

「じゃ、何かあればまた連絡くれよ。」

「はいはい。今晩は一人でのんびりするわ。」

「はは、そうしてくれ。なるべく早く帰るよ。じゃ。」

直太は、軽く笑って電話を切った。