こういう時に限って、アキはなかなか出なかった。

そうだよね。

アキ自身は、きちんと私にお別れしたもん。

とても一方的に。

一度切って、もう一度かけてみる。

少し腰が痛くなったので、近くのベンチに腰掛けた。

「はい、ハル?」

座った途端、耳元でアキの声がした。

声を聞いただけで泣きそうになる。

なんだか、急にどこかへ行ってしまいそうな予感がしていたからだろうか。

まだ、ここにいたんだっていう安心感。

「どうしたんだよ。」

どうしたんだよって。

何だか冷たい言い方。

「こないだの電話のことなんだけど。」

「ああ、うん。」

「やっぱりもう一度会いたいの。会って話したいことがあるんだ。」

アキはじっと黙っていた。

少しして、

「どんな話?」

と、アキは言った。

どんな話って・・・。

どうしてそんな言い方するの?

思い切って電話したのに。

こちらが黙っているのに気づいたのか、アキは優しい声で聞いてきた。

「ハル?大丈夫か?」

「うううん、大丈夫じゃないよ。そんな風に冷たい言い方しないで。」

「ごめん。」

それでなくても、今はとてもナーバスになってるのに。

不安で何もかもが押しつぶされそうになった。