「まっさか、その相手がハルだなんてことはないよな。」

直太の顔は笑っていたけど、本気とも冗談ともとれるような声色だった。

「そんなはずないでしょ。」

私は空いてしまったビールの缶を持ってキッチンへ戻った。

心臓がまた激しく脈打っていた。

息苦しい。

また?!

「おい、ハル、大丈夫か?」

うつむいたまま動かない私を心配して、直太がそばにやってきた。

「ハルは病み上がりなんだぞ。もうこれくらいで早く休めよ。」

直太の温かい手のひらが私の肩に触れた。

「うん。そうする。」

申し訳ないと思いながらも、直太の顔を見ないまま寝室へ向った。

直太の優しさに触れているはずなのに、私の気持ちの中にはまだたっぷりとアキが残っているんだ。

こんな気持ち、これからどうすればいいの?

アキは、そんな私を置いてどこへ行ってしまったの?

ベッドに潜り込んだ途端、堰を切ったように涙があふれ流れ出した。