そして、シチューをスプーンですくって静かに口に運んだ。

何か言って。

なんだか逆に不安になるよ。

「アキって、一人暮らし始めたんだってな。」

ようやく私の方に視線を上げて静かに言った。

ふいな一言に一瞬言葉を失う。

思わず視線をそらして、直太のビールをコップに注ぎながら答えた。

「うん、最近始めたみたい。」

「ふぅん。」

私が入れたビールをぐいっと半分飲み干した。

「あいつ、極度に夜一人になるのをつらがってた時期があったんだけど、もう大丈夫なんだな。」

直太は少し笑った。

そんなこと知ってることが意外だった。

アキが、直太のことをどれだけ信頼しているのかを見たような気がした。

「アキに何か心の変化でもあったかな?ひょっとして本気で好きな人ができたとかね。」

直太は、ビールをぐいと飲んだ。

そして、まっすぐな目で私を見つめた。

体中の血液がドクンと大きく波打ったような気がした。

慌てて、半分空になった直太のコップにビールをつぎ足す。

「そんなことわからないけど。それならそれでよかったじゃない。」

直太から視線を外して言った。