ずっとそのことだけがひっかかって、ずっとそれが私の足を重たくしていた。

私とアキを阻むモノ。

それは、私が結婚しているという事実。

「ハルは幸せにならないといけないんだ。直太兄とね。」

幸せになれる・・・?

「いつか言ってたじゃん。ハルの運命の相手は直太兄なんだよ。だから結婚したんだ。」

アキは自分に言い聞かせるように、私に言った。

「だから、きっとハルは俺の運命の相手じゃない。そう、思う。」

胸が苦しい。

自分の本当の気持ちを向き合おうと思って電話したのに、これじゃ向き合えない。

目をそらすことになってしまう。

「正直、今はものすごく苦しいよ、俺。ハルと会いたいし、今すぐにでも会って抱き締めたいのに。」

私も苦しいよ。アキ。

私も今すぐ会いたいよ。

「でも、いつかこれでよかったって思える日が来るんだ。」

本当の幸せ。

「誰かを傷つける恋は、本当の恋じゃないんだ。」

アキはゆっくりと言葉を選んでいる。

「俺は、ハルも直太兄も傷つけたくない。」