「もしもし、ハル?体は大丈夫か?」

出るやいなや、優しいアキの声が耳に響いた。

それだけで、幸せな気持ちに包まれる。

「うん、昨日はごめんね。もう熱も下がったし大丈夫。」

「そっか。それならよかったけど。あ、荻原さんには昨晩連絡しといたから安心しろよ。」

「今さっき荻原さんから聞いたよ。相変わらずアクション早いよねぇ。」

私はくすくす笑った。

「何がおかしいんだよ。俺はベースは真面目な人間なんだって。ちゃかすな。」

アキも電話の向こうで笑ってる。

「ね、アキ。一度ゆっくり会って話がしたいんだけど。」

アキは急に無言になった。

何かを考えているのか、何かを堪えているのか。

しばらくの沈黙の後、

「俺決めたんだ。もうハルとは会わない。」

え?

心臓が急に鼓動を速めた。

「どうして?」

すがるような声が出てしまう。

「どうしてって・・・。これ以上会ったら、俺制御不能になりそうだし。それに、ハルが直太兄のお嫁さんっていう事実は、絶対消せないんだよ。」

ガクンと膝が落ちるようだった。

思わずソファーに腰を下ろす。

そう、私はアキの従弟のお嫁さん。

その事実は、絶対消せない。