「直太、ご飯は食べた?」

「ああ、いや。ハルからのメール見てびっくりしちゃってさ。すっとんで帰ってきたんだ。だって、ハルが熱出して寝込むなんて、俺と付き合ってから一度もなかったじゃないか。もう心配でさ。」

慌てた様子で帰ってきた直太を想像して、くすっと笑った。

「そんな、心配しなくても大丈夫よ。私は子どもじゃないんだから。」

「何だよ。人が心配してるってのに笑いやがって。」

直太は少し恥ずかしそうに横を向いた。

「でも、それだけ話ができたら大丈夫そうだな。少し安心したよ。」

「うん。ありがとう。」

「安心した途端腹減ってきたわ。カップラーメンでもかき込んでくる。何かあったら遠慮なく呼べよ。」

直太はそう言うと、私の髪を優しく撫でた。

しばらくすると、キッチンの方で「ずるずる」とラーメンをすする音が聞こえてきた。

直太も疲れて帰ってきただろうに、夜ご飯も食べずに看病してくれてたんだね。

純粋にうれしかった。

そして、心強い気持ちになった。

そういえば、直太はいつだって私を心配してくれていた。

どんなときも。

まるで子ども扱い。

それが窮屈な時もあったけど、直太にとっては不器用な愛情表現だったんだね。

そういうところは、アキと似ている。

同じ血が流れているんだから、似てるのも当然か。

二人は、全然違うと思ってたけど、そうでもないのかもしれない。

きっと二人ともそのことにも気づいてないんだろうな。