「どんなことがあっても、絵は描かなくちゃ。それくらいでしょ?アキの取り柄は。」

私は出来る限り優しい顔で笑った。

アキの目がなんだか潤んだように見える。

私から原稿に視線を落として、

「サンキュ。」

と言った。

ここに、長居しちゃいけないって思う。

私は重たい体を無理やりたたき起こして、起き上がった。

「あまり長居すると、また直太がイライラするからそろそろ帰るわね。雑誌の発行楽しみにしてるから。」

言った途端、また足元がふらついた。

そして、瞬時にアキが私の体を支えた。

「無理すんな。」

アキの声は少し怖かった。

「そこまで送っていくから。」

アキは上着を羽織ると、私の肩を抱いたまま玄関の扉を開けた。

こんな姿、誰かに見られたらそれこそ色々言われちゃう。

だけど、今はアキの支えなしではとても立っていられなかった。

そして、そのアキのぬくもりが私の気持ちを支えてくれていた。